音の魔術師、ベン・バート(Ben Burt)
2002/10/07 byぴろいし
 ライトセイバーの独特なサウンドは、シリーズ通して音響効果を担当しているベン・バートによって作成された。(なお、彼はEP2では編集作業も兼任している)

 彼の言によれば、
「EP4の最初のスクリプトを見たとき、ライトセイバーのコンセプトにすっかり魅了された」
そうである。

 彼は真っ先にライトセイバーのサウンド作りにとりかかった。彼は当時まだ南カリフォルニア大学の大学院生だったが、その映写室に非常に古い方式の35mmフィルムプロジェクターがあったのを思い出した。彼の頭の中のライトセイバーの音のイメージが、プロジェクターのモーターの音に似通っていたのである。そのプロジェクターは2つの連動するモーターを備えていた。2つの音は互いに干渉し合うことで、ゆっくりと変化していくものだった。ベンは早速その音を録音しに行ったが、残念なことに彼の満足の行く音ではなかった。それはただ鼻歌のようにうなりを上げるモーター音に過ぎず、バリバリと火花がはじけるような音が足りなかったのである。彼はしばらくその足りない音を探していたが、ある日偶然その音を手に入れる。

 彼が仕事中、マイクを持ってテレビのブラウン管の後ろを通り過ぎたときに、異常な騒音が起こった。テレビのトランスから信号を拾ったマイクがハウリングを起こしたのである。この音と、最初に録ったモーター音を同種類ずつ合成することで、セイバーの基本的な音を作り出した。
 さらに彼は、セイバーが空気を切り裂いたり、打ち合わされる音を作るために、作った音を再生しているスピーカーの前でマイクを動かし、ドップラー現象を利用して変化するピッチを持つ音を生み出したのである。


エピソード2でのベン・バート

 ライトセイバーはあの独特な音無しでは語れない。
 無論STARWARSという映画自体語れないのだが。

 新3部作でも基本的にはこの音は変わっていない。
 ただしわずかな改良は加えられたそうである。また、ダース・モールの双刃のライトセイバーには、さざなみを乱すような連続音が加えられたそうだ。

 余談だが、R2-D2の声はベン・バート自身が赤ちゃんのしゃべり方を真似して出した声に、水道管を叩いて起きる残響音を合成したもの、TIE-Fighterの飛行音は象の鳴き声だったりする。ベン・バートが集めた数千種類の音素材を、彼のイマジネーションでもってデジタルシンセサイザーで加工することで、あの世界の効果音群は生まれているのだ。