MasterReplicasという会社について2

2003/08/11 by ぴろいし

 ある方からお叱りをいただいた。
「ライトセイバーのディープなマニア達は、オフィシャル商品をリリースするMasterReplicasよりも、ノンライセンスのレプリカを偏重する傾向が強い」と。

 これまでこのサイトの中で様々な文章を書いてきたし、LIGHTSABER.DATの掲示板などでも多くの発言をしてきた。その内容を振り返ってみると、なるほどそういわれても仕方のない印象を、読んでくださった方に与えてきたとは思う。

 ただし、僕自身はことさらノンライセンス品を持ち上げているつもりはない。例えば僕が最も好きなノンライセンスディーラーである(あった)Larbelだが、活動当初から積極的なリリースを行ってきたせいもあり、初期の作品はディテールが違う部分も散見され、style-Q初期版などは全体のサイズからして1インチ以上大きかったりする。がしかし、彼はRPFで批判的な意見が出るたびそれらを取り入れ、次々と改良されたバージョンのセイバーをリリースした。それは時として、前バージョンのセイバーを購入した人間を落胆させることにはなったが、それほど、乏しい資料から正確なセイバーのディテールを探り、更には立体物に反映させることは困難なことであったのだ。また購入者達もその辺の事情はわかっていた。
 規模の小さな個人的な活動でありながらも、最終的に世界的に通用する製品群を作り上げ、安価に提供し、また殺到するメールにも迅速にきちんと対応し続けたLarry Leungを尊敬し、またその製品を愛してしまう自分の気持ちは、人情として否定することが出来ない。その辺が文章に出てしまっているとは確かに思う。
 また、DH studioやJ&E、RomansEmpire、そして旧SD studiosなどの小さなディーラーに対してもそれは同様である。

 対してMasterReplicasはどうだろう。
 以前のコラムにも書いたとおり、最初はMRの出現を歓迎した物だった。オフィシャルのメーカーが出現したことで、多くの弱小個人ディーラーが圧力を受け、つぶされることは仕方がないこととの感想を持った。明らかに違法行為ではあるのだから。
 また、手に入れるのが決して容易とは言えない各種ノンライセンス品とは違い、世界中のショップで精巧なレプリカを手に入れるチャンスを作ったという功績は、SWファンにとってはかなり大きな物であると言える。また、数千本単位で均質な仕上げを持つセイバーを製造するのは、大変な作業だろう。

 しかし、ディープなマニアにとっては、その製品に満足がいかなかったのは事実だ。どれも大変に高価な定価が付けられているにも関わらず、web上の商品説明は不鮮明な低解像度の写真で行われるのみだ。頼りになるのは、「ルーカスフィルムのライセンスを受け、実物プロップの提供を受け、詳細な調査により完璧な複製を作成した」という最大の売り文句だが、そんな有利な立場にありながら、ほぼ文句のない品物と言えるのはドゥークー伯爵のセイバーだけで(それにしてもエミッターの針穴だけでも購入意欲を失わせるには十分だが)、その他のセイバーはどれも数カ所以上のディテールの間違いや不可解な解釈が存在する。多くのノンライセンス品は分解が可能で、遊び心を満たしてくれると共にワーキング化への可能性、カスタムへの道を提示してくれたが、MRのセイバーは分解不能の部分が多く、表面処理は脆弱で、重量のかさむ完全装飾品だ。いや、何より高価すぎるというのが、購入する面でも扱う上でも一番のネック、最大の弱点といえる。要するに価格とその完成度のバランスが取れていないのだ。
(ちなみにANHオビ・ウェザードはなかなかがんばっていると思うし、同様の意見も多いが、どうしても「MRにしては」という言葉を頭にくっつけたくなる。パーフェクトではないし、私にとって重要な部分のディテールがやっぱりおかしいので、購入には至っていない……)

 こうなると、いかに違法であれ、努力と共に良質な製品を生み出していたノンライセンスディーラーがつぶされたことも、いささか理不尽な物に感じてくる。

 私たちは、なにも大メーカー叩きがやりたくてネット上に集まっているわけではない。単にいいライトセイバーを手に入れたいだけだ。MRはそんな我々の欲求を満たしてくれる製品をあまり出せていないだけなのだ。弱小ディーラーに対する人情は否定しないが、製品に対する客観性は失ってはいないとはっきり言える。

 「MRの製品のディテールのどこが悪いのか、また他のノンライセンスセイバーのディテールはどうなのか具体的に知りたい」という方も多いとは思う。その辺に関して言及していないのは、自分の手元に実際にそれらの製品を持ち合わせていないため、また高解像度の鮮明な写真を持ち合わせていないためである。各地から得られる情報や投稿された写真群から、たいていのレプリカの特徴については把握しているつもりなのだが、それらはある意味又聞きの劣化した情報であるため、自信を持ってサイト上で提供するのは避けたいし、また他人が投稿した写真を勝手に使うことはできないし、いちいち転載許可を取るのは面倒なために行っていない。掲示板ではその手の会話は行われているが……。

 また、高価なMR製品を、ディテールへの興味のためだけにほいほいと買うことはできない。もしMR製品が、高価であるというハードルを越えてしまうほどに魅力的な製品であるなら、万難を排してでも買っているだろうが……。 僕と周囲の人間がどれほどライトセイバーに毒された人間揃いであるかは、このサイトを見て頂ければわかっていただけるはずだが、それらの中毒者が軒並みMR製品は殆ど手にしていないのだ。

 ただしこのコラムの意見を含め、サイトに記載してある文章は各執筆者の個人的な意見であることは忘れて欲しくないところだ。人によってはエミッターの針穴なんて気にならない人はいるだろうし、分解なんかしません、所有しているだけ、飾っているだけで十分、本物との表面仕上げの違いなんてどーでもいいです、そんな細かい些細な違いまで気にするんですかあなた達は、と思う方もいるだろう。そういう方にとっては、MR製品は十分に所有欲を満たしてくれる。
 ライトセイバーのことについて重箱の隅まで調べる前にMR製品を購入してしまって、満足するのもいいことだと思う。セイバーは嗜好品で、本人が満足することがなにより重要なのだ。最終的にはどのセイバーがいいかは本人しか決めることはできない。これまでいくつかの自作セイバーを見せて頂く機会があったが、Larbelの旧作同様、新たな発見が日々行われているセイバー界においては、それらの自作セイバーもいろいろと間違いが多くなっている。技術的にもつたなさが目立つこともある。がしかし、僕にとっては制作者の努力の結晶であるそれらの品は、まぎれもなく至高のセイバーの一つであるのだ。

 自分が所持しているものや、他の方から写真の提供を受けたものに関してはReplica Showcaseのコーナーで紹介しているので参考にしてほしい。

 また、セイバー達の些細なディテールまで気になって来ちゃった中毒者は、どうぞ掲示板にユーザー登録して参加して欲しい。

 2003年6月25日、またもebayにおいて、MasterReplicas製品のプロトタイプのオークションがスタートした。
 今回の商品はEP2メイス・ウインドゥのライトセイバーであり、ごらんのように、メイス役の俳優であるサミュエル・L・ジャクソン本人の手によるサインが、セイバー上部のラバー部分に記入されている。(そのためなのかそれともプロトタイプ故なのか、プロップに存在するラバー部分の稲妻状のモールドがこれには無い)。
 3日間の入札期間の後、$7201ドルという高額で落札された。興味のある方はここにオークション内容が保存してあるのでごらんいただきたい。(保存されたページから先のリンクに関しては、ほとんどがebay本体に保存されているため、ある期間を過ぎればアクセスできなくなる)

 この、プロトタイプをオークションに出すという行為に関しては、「MasterReplicasという会社について」で述べたのでそちらをごらんいただきたい。